『竹川恭平物語』第一章第一話
『竹川恭平物語』、
これは竹川恭平という人間が歩んできたサッカー人生を巡る物語である。
今の竹川恭平というサッカー選手、
いやもっと言えば一人の人間が
どのように形成されてきたのか、
この物語を辿れば見えてくるだろう。
さぁ、みなさんに没入していただこう。
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第一章(始まり〜逆瀬台小学校)
第一話
『サッカーとの出会い』
サッカーとの出会い、
それは20年も前の話。
当時6歳の年長さんであった。
小さい頃から、
体操教室やトランポリン教室など
本格的ではないにしても体験していた。
しかし球技はしていなかった。
母はかねてから
「何かスポーツはやってほしい」
と思っていたそうだ。
そして、
同い年の親戚が
地元の小学校のサッカークラブへ体験に行くということで、一緒に連れて行ってもらった。
これがサッカーとの初めての出会いである。
どういうことをしたのか、
そうした詳しいことは覚えていないが
ただただ「楽しかった」のだ。
「サッカーをやりたい!」
そして後日もう一度練習に参加した。
しかし、
スポーツの世界はそう甘くはなかった。
その日赤コーンを等間隔で置き、
そこをドリブルしていく練習をした。
それが全くといっていいほどできなかった。
当然といえば当然。
当時6歳であり、
しかもサッカーをしてまだ2回目。
そして聞こえてきたのだ。
「めっちゃ下手くそやん!」
と言いながら笑っている人たちの声が。
それは一つ歳上、二つ歳上の2、3人。
誰が言ってきたかも鮮明に覚えている。
悔しくて、腹が立ち、そして大泣きした。
「もうサッカーなんて絶対やらん」
そう言って体験を終了した。
本当にもうサッカーをするつもりなんて無かった。
しかし、
嫌いなままで終わらせるのは嫌だ、
そう思っていた母はもう一度練習に連れて行ってくれた。
そうして始まったのである。
竹川恭平の不器用ながら真っ直ぐなサッカー人生が…。
さすがに幼稚園年長、小学校低学年で
どんなことをして、どんなことを教えてもらったのかは覚えていない。
ただサッカーを始めてから、
幼稚園の休憩時間には
遊具をゴールにして友だちとPK対決をしていた記憶がある。
小学生になると、
今では考えられないが、
スパイクを履き、レガースをはめて
学校まで歩いて行っていた。
土日しか活動はなかったものの、
少しずつ成長していき、
今の自分を表すかのようなとある試合を迎えた。
それは小学2年生の時の練習試合。
ぼくはその時サイドバックをしていた。
そして、
前線の人たちが相手ゴールに攻め込んだ状況で
ハーフウェイラインで構えていたぼくのところに
クリアボールが転がってきた。
そのボールを
ぼくは何を思ったかダイレクトでシュートを撃ったのだ。
そのボールは飛んで飛んで飛んで、
なんとノーバウンドでゴールネットを揺らしたのだ。
小学2年生、わずか8歳で、
ハーフウェイラインからノーバウンドのボールを蹴れるというパワー。
この時から、
自分のストロングポイントである“パワー”は健在だったのかもしれない。
身長も高く、パワーもあった自分は、
フォワードの道へと進んでいくのである。
第一話『サッカーとの出会い』完
次回、第二話『役割と責任感』
お楽しみに!